呼吸
闇が満ちている
汚れた空気を身にまとった詠い人
あの時と同じように歌おうと息を吸い込んでも
漏れてくるのはただ枯れた息の嘔吐
吸い込みすぎて吐き出せなくなった闇はまだ
自分の中でくすぶり続けている
もう今となっては誰も信じてはくれないだろう
こんな風になりたいなんて思ったことは一度も無いんだ
「夢を壊された」なんて泣いて
馬鹿みたいに哂いながら
そのとき歌っていたそれこそが希望ではなかったか
そのとき側にいてくれた人こそが恋人ではなかったか
もうあの頃のようにはいかないのだろうかと
思わず来た道を振り返り手を伸ばす
暗い霧
見えない地平線
瓦礫の道
灰色に染まった雪
霞む視界
震える両脚
冷たく裂ける空気
頬を伝う涙
心臓が震え、息が漏れる はぁって 息だけが漏れる