「午後三時を過ぎた頃の散歩」

何気ない道のり

すれ違う人は何も知らない顔をして

線路沿いを歩く

「赤い」って言葉の似あう黄色がかった陽の光の空

線路沿いに続くその空を雲が走る

いつか私が立っていた野原に向かってまっすぐに

「遠い空、話し声」

薄闇に目が覚めて自分に気づく
窓から眺めるのはいつも夕暮れどきの空
懐かしさが無言で私を責め立てる

緩やかな時が影を少しずつ消していく
夜が来れば楽になるんだろう
何もかも消えて沈んでしまえるんだろう

その前にどうか ああ
誰かに会わせて

宙に散る想い

叫ぶように犬が鳴いた

その昔 君といた窓の向こうも夕闇だった
ぽつりとひとつ 言葉
建ち並ぶ鉄塔
教室の床に伸びる影
少しずつ見えなくなる町の並び
まばらにともる灯り
君の筆が書いた文字
吹奏楽の音
またね
君が帰ったあとの部屋

このまま夜が来れば楽になるだろう
自分のことも忘れて沈んでしまえるだろう

でも、その前にどうか
誰かに会わせて

心で砕ける言葉

逃げるように鳥が羽ばたいた
遠い空

話し声

「願うのならもう一度あなたと」

遠い空で鐘が鳴っている
朝早く、鮮やかさをなくした景色

どうしても目を見ながらじゃ言えないことばかりで

恥を忘れて叫んでは
大切な人との絆は途絶えるばかり

あなたにはずっと厳しく当たってきたのに、
本当は甘えてもいいんだよって言ってくれた

いつか言ってくれたことも覚えてるよ
「私を許せないなら、許さなくていい」って

それでもわたしは

わたしは


遠くから聞こえる鐘の音が
まるで嵐のように
わたしの中にある憎しみと怒りを撫でていった

「朝がくる少し前の暗闇で」

白くて透明な雪のようなかたまりが
静かにてのひらで溶けていく

そうして知ることができた柔らかさを
何度忘れたって思い出さずには いられない

気がついたらこびりついていた憎しみも
いつの間にか過ぎ去っていた悲しさも
きっといつか思い出そう

誰かが思い焦がれて泣く声を聞いて
自分だけ笑うのがいやだったけど

自分を救う歌をうたえるのは自分だけだと
他人はただ叫んで見せるだけ

昔、一緒に泣いてくれた友達のことを
思い出しながら泣いていた

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