画家
 
 
かつて描いた景色はこの場所だっただろうか
画家はふと足を止め、土に触れる
 
その脇を通る町の人
見覚えのない彼らに見る面影は無いとしても
 
見つからないとしても探し続けよう
夢に見たあの風景
幻の中で言葉を交わしたあの人を
 
やがて忘れるとしても描き続けよう
 
そして忘れないために描き続ける
いつか見た風景
 
故郷の町の、木立の中に建っていた小さな古い図書館
窓から優しい風と陽射しが漏れる静かな部屋
流れる時間すらやわらかに包み込む空気
そして、その物語の中に眺めた景色
 
懐かしい思い出