旅路
 
 
遠く風の彼方を馬車がゆく
風は鳥を世界へと導き笑いかける
 
雪の降らぬ国へ
 
乾いた荒野に立って青い空を仰ぐ
この歌はどこまで響き、吸い込まれ消えるのか
 
岸壁の縁に立って青く透明な海を仰ぐ
もう声が届くところに彼はいない
 
どれだけ遠くに来てしまったのか
もう戻れないほど来たような気もするし
振り返ればまだあの町並みが見えるようにも思えるのだ
 
一輪だけ摘んできた花はとうに枯れた
それでも捨てられずにこうして胸に抱く
 
風の香りはまるでその花の残り香
 
色づいて流れる空気はまるで誰か親しかった者からの便り
 
異国の風に記憶の香りを思い出し
ただ惹かれるようにここまで来ただけでしかない
私は太陽を見上げ眩暈を覚える