海辺の暗闇は白い星さえ隠して
互いの後ろ姿を見えなくしていた
いずれこの先の道が分かれると知っていたら
あなたは最初から別の道を探しただろうか
何も知らずに歩き出した砂浜
海の向こうに、燃える火
それは浜辺にひとつの影を投げかけた
どこまでも遠くの空との境界から
この場所へ
光が届いている証拠だ、と私は思う
距離は、思いを隔てるのでしょうか、と、きみは言う
あの火を見てごらん
私は言いたかったけど、きみがいる場所まで声は届かない
いつか一緒に見た海
どこか青く光っていたその水面の色は
私たちの間の空気まで
青く
染めた
誰一人として出会うことのない海辺で
今はこの場所を選んで良かったのだ、と炎は告げていた
もしかしたら、きみのほうがずっと意義深い道を選んだのかもしれないね
ゆっくりと迫る夕闇の中で、それでも炎は消えずに水面を照らしている
距離は、思いを隔てるのでしょうかと問いかけてみたい
今はどこにいるのかも分からないきみのことを忘れずにいられたら
確かめたい
かつて、私たちは言葉を使うことなく約束を交わしていた
だから今も伝わるのかもしれない、なんて
きみがどうしても進まなければいけなかった正しい道を
私はずっと羨んでいたい