「寒い朝」

目覚まし時計の音が鳴る
カーテンの隙間から白い雲
早起きは苦手なんだ
それでもなんとか家を出て

薄青い空気、白い息
ああ寒いって思わず口に出す
少し遅れそうになって駆け足

いつもの橋の上、やっぱり君の方が先だった
ああ、どうして君に会うと笑顔になるんだろう
頬が緩むのを止められない

そんな顔を君に見せるのが恥ずかしくて
一歩一歩ゆっくり、少しだけ駆け足で


おはよう


毎朝同じ挨拶

明日の天気予報は雨だって
でも傘持って行くからね

「少しだけきれいな景色を」

電車は行ってしまった
はりつくように寒い空の下
私は歩く

あたたかいスープがほしい
凍える指先に息をはきかける

なにも考えずに
聞こえてくる音楽
ほのかな光

ひとは

ひとつも間違えずには歩けない
もつれかけた足を前に出す

目をつむって
焦燥する呼吸
どうか行かないで 待っていて

届けられるものはひとつもない
音楽はとてもきれいで
頭の中には懐かしい景色ばかり

どうしてもう少し早く歩き出せなかったんだろう
深く息を吸い込んでも
鼓動は込み上げる

遠くにはきれいな空
私には周りの見えない孤独

もしも私が間に合わないとしても
せめてどうか少しだけ
あなたのところにはきれいな景色を

「求めてたのは答え」

強い日差しはまぶしさよりも
苦しいほどの熱気で
思考を奪って
なにも考えられないから
誰かを傷つけても平気だった

お願いだから
すぐ理解できる嘘をつかないで
心から笑える話をしよう
それができないなら何処かへ行って

強い日差しで視界がぼやける
自分がどこへ向かっているのかも見えなくて
足がもつれて地べたに落ちる

知らないふりをするなら最初から笑わないで
疑いの眼差しを向けるなら手をとらないで
振り払って
目を向けるのは幾億の彼方
白い光
走り出した先にもまた晴れ渡る空
何キロも後ろに置いてきて
呆然と
ただやっと息ができる

「青空」

田んぼの脇に流れている汚れた用水路

聞く気もないのに空に響いていた笑い声

ふと足を止める

真っ青な空に白い雲

誰かと遊ぶ約束をした

夏の日

はしゃぐような笑い声

鞄は重たい

細い県道を走る車の音

相変わらず話し声はどこか遠くで

私は生きている

この青い空の下でただ息を

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