手紙
ああ、なんだろうまだぼんやりと覚えている
確か私は貴方のことが好きだった
貴方の言葉に救われたり
貴方の言葉に苦しめられたり
そう、貴方が何気なくするだけのその沈黙さえ
まるで私を責め立てているようで
それでも昔はよく話しかけてくれてたよね
たくさん手紙も届いた
貴方から真夜中に届いた手紙
それに絶望して自分に傷ついたこともあった
どうしても
どうしても貴方に振り向いてほしくて送り続けた手紙
きっと何処かで事故にあって届かなかった
だって返事かえってこなかったから
送りなおす勇気は無かったな
*
あれから私は自分の日常をただ生きていた
貴方のこと信じてみようと思ったんだ
言葉なんてなくても会えなくても何かあるって
貴方を追いかけなくなって3年も経って
知らないうちに貴方は引っ越していた
でもよかったんだ もう私には目指してる夢があったから
毎日街中を行き交う車の間を縫って
私はいつも自分の足だけで歩き進む
この服が煤けて汚れても 帰る家さえあればそれで良かった
突然車にはねられた時まではそれでいいと思えていたよ
貴方はお見舞いに来なかった
私も貴方のことは忘れてた
苦しい ああ 苦しいよ
だってどうしたらいいか分からない
そう日記に書き綴るだけの日々
私は昔の自分を忘れてた
*
きがつけばまたあの時と同じ
結局また別の誰かに振り向いてほしくて書き続けていただけ
せっかく貴方のこと振り切れたのにね
なんかこんなもの
分からないでしょ
あの人の喋る言葉わからなくて
それでも見よう見まねで手紙書いてみたのさ
自分でもなに書いてるのかわからなくなって
ああ、ちょうどあの時もこんな真夜中だったかな
急に何もかも虚しくなって街灯の光が綺麗に見えた
ああ、なんだろうまだぼんやりと覚えている
こんな今だからこそもう一度貴方のことを思い出せる
「ありがとう」
なんて今さら言うのも変だけどね
色んなことがあったよ
ほんとは大したことないかもしれないけどね
最近どうしてる?
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