彼女は死んだ。

その日は前の日から降り続いていた雨もやんで、
雨上がりの空はとてもきれいで。
いつもより少し清々しい気分になれて、
鼻歌なんて歌いながらいつもの道を歩いたりしてた。
そんな日に彼女は自らの命を絶った。
私の知らないところで。


あれから6年、何事もなく私は生きていて、

ある夜、ふと家を抜け出して
その日は月がいつもよりも眩しくて、
何故か彼女のことを思い出して感傷的になって、
そんな時に思う。

みんなたった今この瞬間も何かを思いながら生きているんだろう。
辛いだの苦しいだの、何でもないのに泣きたくなったってそれもよくあること。
きっと彼女にもこんな夜があったんだろう。

公園のベンチに腰かける。

自分だけが辛いなんて絶対思うな。

夜の道をひとり歩きながら
目に映るものすべてに触れる。

工事現場に残されたスコップ、
街路樹の幹、
ガードレール、
道ばたの草、
公園のベンチ、
地面、
濡れた土、
自販機、
空気、
風、
自分の肌、

すべてがここにあって
そして私も生きている。
この世界に私はいる。

そうか、また明日が来るんだ。
きっとつまらない毎日が、私を救ってはくれない毎日がまた。

彼女を救ってはくれなかった人々とまた。